投稿日時:2015年2月25日
いつも大変お世話になっております。
ニュースや新聞ではやたらと景気の良い話ばかりが報道されておりますが・・・
弊社をはじめ一般的には、景気が良くなった実感はない方が多いと思います。リーマンショック以来、給料は上がらず、電気代や燃料費は高騰し、特に中小企業やそこで働く人々にとって、経営や生活が苦しくなり続けているのが実態のように思います。スクラップの発生量も年々減少しております。
さはさりながら、暗い事ばかり考えていても仕方がありませんので、なんとか前向きに物事を考えるようにしよう、と、自分を奮い立たせながら頑張っております。
本日は鉄の生産のお話です。
ご存じの通りこの10年程、各種の金属が値上がりし、世界的な資源ブームが起きました。鉄鋼を例にとりますと、1980年代から2000年まで、世界の粗鋼生産量は大体7億トン台で推移しておりました。その間、鉄鉱石の値段は12~14米ドル/トン(日本円で1.3~2.2円/kg程度)ときわめて安く、言ってみればその辺にある砂利や砕石と大して変わらない価値しかありませんでした。其の間、我が国の生産量は1億トン台を維持し、世界一の鉄鋼生産国の座を守り続けておりました。
世界の粗鋼生産量推移 (出典:World Steel Association 単位千トン)
生産国/年度 | 1980年 | 1990年 | 1995年 | 2000年 | 2005年 | 2008年 | 2013年 |
世界全体 | 718,401 | 770,429 | 753,187 | 850,156 | 1,147,805 | 1,343,269 | 1,649,303 |
日本 | 111,395 | 110,339 | 101,640 | 106,444 | 112,471 | 118,739 | 110,595 |
中国 | 37,121 | 66,350 | 95,360 | 128,500 | 355,790 | 512,339 | 821,990 |
日本/世界 | 15.5% | 14.3% | 13.5% | 12.5% | 9.8% | 8.8% | 6.7% |
中国/世界 | 5.2% | 8.6% | 12.7% | 15.1% | 31.0% | 38.1% | 49.8% |
ところが、世界の粗鋼生産量は2004年に10億トンを突破し、2011年には15億トンを突破しました。その大半が中国の生産量の増大によるものです。その結果、鉄鉱石の価格も高騰し、2008年には61.57ドル/トン、2009年には80ドル/トン、そして2011年には167.79ドル/トン(円換算13423円/トン)と10倍以上の値上がりとなりました。
今や世界の鉄鋼生産の半分が中国産、ということになり、いくら彼の国が人口が多いといっても、そんなに鉄を使うはずはなく、鉄鋼関係者はいつバブルがはじけるか、と固唾を飲んで見守っていた、と言われております。ところが、中国は全く生産調整をする気配はなく、結果として昨年より大量の鉄鋼を周辺国にばらまき始めました。特に昨年後半より、各種鉄鋼製品やビレットなどの半製品を非常な安値で輸出し始め、特にアジア地域での市場を混乱に陥れております。
翻って我が国では、元々高炉7割(鉄鉱石が主原料)電炉3割(スクラップが主原料)の比率で推移していたものが、近年では電炉比率は25%を割り込み、スクラップの消費量は暫減しております。結果として高級鋼材が主力となり、今しばらくは中国製品よりも競争力があるといわれておりますが、中国の製品の品質も大部向上している、と言われておりますので、いつまでも安穏としていられなくなる模様です。
結論として、今後数年の間に鉄鋼相場全般にて(下向きでの)大きな変動が予想されます。材料購入に関しては、当用買いに徹することが肝要と思います。
スクラップ屋の立場から見ましても、今後当分の間は鉄スクラップは安値傾向が続くと考えております。我々にとってはスクラップが高いほうが多少なりとも利幅が取りやすく、有難いのですが、上記のような理由で、相場は期待できませんので、これからは価格よりも売り先を確保することが重要になる、と考えております。
弊社は小さいながらも納入先のメーカー様に安定供給を心がけてまいりましたので、こういう時に今までの行動を評価していただければ、と考えております。
ともあれ、余り先の心配をしても仕方ありませんので、目の前の仕事に精一杯取り組みつつ、何が起こっても対処できるよう頑張ってまいりたいと思います。
投稿日時:2015年2月11日
毎度お世話になっております。
昨年秋より大きく値下がりした鉄スクラップですが、ここにきて一段の値下げが始まっております。1月も関西地区を中心に値下がりしましたが、関東は弱含みながら大きな下げには至らず、少し期待を持たせる展開でしたが、2月入り後、特に海外市場が急落状態となり、我が国からの輸出契約がほとんど成約できない状況が続いておりました。
昨日行われた関東鉄源協同組合の輸出入札では、前月比3575円/トン値下がりの23000円/トンにて辛うじて1社5000トンの落札(通常月は2万トン)となり、最大手東京製鉄はすかさず500円/トンの値下げを発表、関東地区電炉メーカーも追従しました。
湾岸地区の輸出向け商社ヤードも軒並み値下げ及び荷受制限を行っており、当面は値下げが続く模様です。
ご存じのとおり、我が国は鉄スクラップ余剰国であり、年間600~900万トンもの鉄スクラップを輸出してバランスをとっておりますが、全体の55%以上の輸出先である韓国の購買が激減しております。また、米国の輸出価格も急落していることから、中国、台湾等も高値での契約には見向きもしなくなり、先行きには暗雲が立ち込めております。現在各商社筋は、ベトナム、タイ、インドネシア、さらにはインド方面まで販路を求めて活発に動いている模様ですが、遠方になればなるほど輸送費が嵩むため、結局は安値に収斂されていくことになりそうです。
長く御商売をされていらっしゃる方々はよくご存じと思いますが、20年以上前には鉄スクラップは非常に安く、いわゆる逆有償という、回収にあたってお客様から費用を戴かなければならない時代もありました。過去10年程は、金属バブルと呼ばれたように、スクラップは高いのが当たり前、という時代が続いておりましたが、そろそろまた金属が安い時代に入るのかもしれません。
弊社も出来るだけ下げを遅らせて頑張っておりますが、想定以上に値下がりが早いため苦戦しております。なんとか早く相場が底を打ってくれることを祈るばかりです。
一つだけ良いことがありました。ステンレススクラップも今年に入ってから10円/kgの値下げとなっておりましたが、ここにきてニッケル相場が若干値上がりしたため、一部メーカーが裏値対応で5円程度の値戻しをしました。5円なんてけち臭いこと言わないで20円位あげてくれ~と心の中で叫んでおります。
投稿日時:2015年2月9日
いつも大変お世話になっております。
前回からの続きです。
オークランド空港に到着しましたが、当然ながら入国カードも全部英語で書かれており、何が書いてあるか良くわからないまま、適当にチェック欄にチェックを入れて入国審査に臨みます。審査官は私をジロリと睨み(?)ながら何やら英語で質問してきます。なんとか適当にごまかしてにこにこしていたら、私の入国カードに何やら書き込んだ後、「通れ」といわれてほっとしました。ところがその先に第2の関門が待ち構えておりました。
NZでは、入国審査の後、検疫検査場を通らなければなりません。再びここで英語の攻撃、日本人にありがちな、わからないのについ「Yes」と言ってしまう悪い癖が出ました。検疫官は「こりゃだめだ」という風に首を左右に振ると、「あっちに行け」と別のカウンターを指差します。そこに待っていたのは2メートルくらいありそうなポリネシア系の巨人。再びじろりと睨まれます。
あいかわらず英語でまくし立ててきますが、当然(?)こちらは何を言っているのかよくわかりません。何度も聞き返すと「なんでお前は現金を持ち込むんだ」と言っているようです。
実は入国カードには「1万NZドル(70万円程度)以上の現金を持ち込むか」という質問事項があり、私は間違えて「Yes」と書きました。もちろん大金を持っていたわけではなく、日本円で10万円程度(1400NZドル換算)を持っていただけだったのですが、間違えた、といっても後の祭り、「そのお金を出せ」と言われても無い袖は振れません。最終的に間違いだったと納得してもらうまで1時間以上掛ってしまいました。
空港の入国ゲートでは通訳をお願いした方が待っているはずです。メールでのやり取りだけだったので、どのような方かもわかりません。約束の時間はとうに過ぎており、私がゲートを出たときには誰もいませんでした。すでに一緒の飛行機に搭乗していた日本人の方たちはとっくの昔に空港を後にしており、日本語をしゃべれそうな人は一人もおりません。さあ大変、いきなりニュージーランドで一人ぼっち?
幸いなことに、15分ほどで、通訳の方が私を見つけて下さいました。「日にちを間違えたのかと思いましたよ」と言われながらもこちらは地獄に仏、とにかくほっとしました。
私は相当青い顔をしていたのでしょう、「とにかくお茶でも飲んで落ち着きましょう」といわれ、空港内のカフェに腰を落ち着けたときには本当に嬉しかったことをよく覚えています。
カフェにて自己紹介と、渡航の目的などをお話ししながら、事前にお願いしておいた現地のスクラップ業者さんの事情をお伺いすると、通訳の方は???。どうもよく意図が伝わっていなかったようです。ただ、なんとなくそういった業者さんの集まっているエリアがある、ということだけは調べておいてくれたので、取り合えずそこに行ってみよう、ということになりました。
いよいよニュージーランドデビューです。
投稿日時:2015年2月8日
毎度お世話になっております。
今日は、私がなぜニュージーランドからの輸入を始めたかについてお伝えしたいと思います。
2008年後半、忘れもしないリーマンショックが起こりました。8月頃より鉄スクラップが暴落し(7万円/トン⇒1万円/トン)、一体どうしたんだろう、と思っていたところ、10月末より我が国、特に製造業に大きな影響があらわれました。弊社のお客様も軒並み半分以下の操業率となり、当然スクラップの発生も激減しました。週休3日が当たり前となり、工業地域は火の消えたようになったことを今でも鮮明に覚えています。
結果的には予想より早く、半年程度で状況は随分と回復いたしましたが、2009年初頭には「これからどうなるのだろう」という不安でいっぱいでした。多くの皆様が同じお気持ちでいらっしゃったと思います。
色々考えましたが、なかなか良い案は浮かびません。四苦八苦しながらも、最終的には「まあ、なんとかなるだろう」と考えるようにしました。また同時に、外の世界に目を向ける良い機会かもしれない、と思いました。
それまで私は仕事に追われ、年間300日以上仕事しておりましたので、海外に出かける、などというのは夢のまた夢、かみさんには「引退したら海外旅行に連れていくから」などと根拠のない話でお茶を濁していた位でした。
幸い?仕事が暇なので、なんとか3~4日位なら会社を留守にしてもなんとかなりそうです。そこでどこへ行こうかと色々考えました。もちろん何のつてもなく、情報もありません。ただ考えたことは、「人の行かないところ」「治安の良いところ」そして「食べ物が(自分にとって)食べられそうなところ」(私は偏食です)。
ご存じのとおり、それ以前から、多くの会社が主として東南アジアに商材を求めて出かけて行きました。そんなところに弊社のような小さな会社が出かけて行っても袋叩きになるのは目に見えています(笑)。考えた末に思いついたのがニュージーランドでした。
彼の国には20数年前、学生時代に一度旅行に行ったことがありましたが、それっきりで、まったく伝手も知り合いも無く、当然英語も全然しゃべれません。そこで現地で通訳をしてくれる会社を探し、合わせて現地のスクラップ業者の事情を出来るだけ調べてくれるようにお願いしました。相手さんからは「スクラップ?、古い自動車かなんかのことですか?」と聞かれ、頓珍漢なやり取りをしながらも「とりあえず一回行ってみよう」ということで2009年4月に初めてオークランド空港に降り立ちました。
長くなりましたので続きます。
不安でいっぱいのオークランド
投稿日時:2015年1月28日
毎度お世話になっております。
ホームページを作成したのはよいのですが、何を書いたら良いのかわからず、悶々としておりました(笑)。
とりあえず、一般の方にはわかりにくいかと思われるスクラップの価格形成についてお伝えしたいと思います。
ご存じのとおり、金属は、原油などと同じように世界中で取引されており、ロンドン、ニューヨーク、上海などの主要な商品取引所の価格をもとに地金の国際相場が形成されます。それに加えて、地域によるプレミアム加算や需給バランスを勘案して各々の取引価格が決まります。わが国では、それぞれプライスリーダーと呼ばれる大手鉱山会社(銅=JX日鉱、亜鉛=三井金属、鉛=三菱マテリアルなど)が、相場変動に応じて建値を改定し、市中の製品相場はそれに基づいて取引が行われます。
スクラップもこれらの建値やロンドン金属取引所などの相場を基に、精錬メーカーと納入業者間で価格の取り決めを行いますが、契約条件や期間は様々で、アルミであれば基本的に半月毎の値決め、銅であれば月間の平均値を基準と致しますが、長期とスポット、数量のボリューム等、契約内容により条件は変動致します。
全般的にスクラップの不足していた時代には、いわゆる直納問屋と呼ばれる大手さんが強い価格交渉力を持っていました。現在では、1)スクラップが全般的に余剰であること、2)スクラップが国際商品化したこと、3)商社の介在による流通の変化、等により小規模業者と大手の価格差は非常に小さくなりました。そのため、経費のかかる大手であるほど厳しい商売を強いられている、と言われております。
それでは発生元における価格はどのように決まるのでしょうか。実はスクラップ商売のコストはかなりシンプルで、輸送コストが大半を占めております。大雑把に申し上げますとスクラップの価格は ①メーカー購入値―②輸送コスト―③選別・加工コスト―④発生元からの回収コスト=発生元の売値 となりますが、例えば選別不要な上質のスクラップが大量にあれば②、③は不要となり(発生元から直接メーカーへ)発生元の売値は高くなりますし、少量であったり、回収に手間のかかるもの、選別・加工の必要なものは必然的に安くなります。ですから、1)出来るだけたくさんの量を2)きれいに選別し、3)回収しやすいように保管する 事により、より高く販売できることになります。
しかしながらスクラップは通常の製品と違って形状も様々であり、色々な金属の複合物であることもままありますので、発生元と引取り業者の間でよく話し合いをされ、保管場所や容器等の工夫をすることが肝要であると思われます。
インターネットの発達により、「高価買取」とか「業界No1の高値」(ぷぷぷっ)などという宣伝を散見しますが、実際に取引してみたら今までの業者のほうが高かった、などというケースも多々見られます。理論的にメーカーの買値を上回って買えば損をするわけですから、そんなに上手い話はない訳で、上記のコストを如何に下げるか、ということが大事だと思います。
ここ10年程は金属の価格が高値で安定し、金属泥棒が横行するなど、一般的にも「金属は高い」というイメージをもたれがちですが、長期的に振り返りますと、スクラップを回収するのに費用を戴く、いわゆる逆有償や、非鉄金属でも売れなくて困った時代も何度もありました。 昔は年末にスクラップを売って忘年会の費用にするとか、社長のこづかい?になったりとかいうレベルの商品だったものが、立派な商品?となったおかげで親会社から「スクラップを返せ」とか、「スクラップ控除をもっと高く見積もれ」などという圧力を受けるようになったという笑えない話もよく伺います。
あまりスクラップが注目を浴びすぎるのも困りものだと感じる今日この頃です。